タイトル以外の何物でもない記事であります。僕は今、お酒を飲んでいます。一人で飲んでいます。お酒が弱い僕にとって、これはなかなかに珍しい事態なのであります。
思えば、「僕はお酒に弱いのだな」と自覚したのは大学1回生の頃でした。そして、「お酒が強くなりたい」と思い、京都の下宿先で一人お酒を飲んだものです。その時に買っていたのは確かカンパリでした。真っ赤な瓶に入ったカンパリを、氷と共にオレンジジュースで割って、部屋を暗くして、お気に入りの音楽のMVを見ながら飲んだものです。確かそのときよく見ていたのはradioheadの「no surprises」でした。
「今日は限界まで飲むぞ!」と固く誓ったのに、わずか一杯飲むか飲まないかで「もう無理だ」と思ったものです。
鼓動は早くなり、視界がクラクラ。そして酔っ払うと音楽の音色が体の底から響いてくるように感じられ、「ああこれは気持ちいいなあ」と思うのです。
「本場UKのドラッグミュージックってこんな感じなんどろうなあ。ラブアンドピース!セックスアンドロックンロール!」とか一人で妙にテンション高く盛り上がっていたものですが、僕が飲んでいたのは所詮カンパリオレンジ一杯。破天荒なロックンロールには程遠い、ただの20代の文系男子学生でした。
そう、僕はいつだって中途半端だったのです。憧れてる男像みたいなのは確かにあって、自分は何かができるはずだと思い込んでて、でも実際にはできないのだけどそれを「僕は大器晩成だから」とか思ったりしてたのです。
本当は、ミジメでみっともない、何の中身のない、そこら中にいる大学生にすぎませんでした。
あれから約 15年が経ちましたが、本質的には僕は何も変わっていないように見受けられます。仕事に没頭し、そこそこ成果らしいものは納めてきました。できることも相当増えました。大学生だった僕に、誇ってやりたいくらいです。「ほら、お前は将来、そこそこできる大人になってるんだぞ」と。
でも、ダメなのです。本質的には僕は何も変わっちゃいません。カンパリオレンジ一杯で顔を真っ赤にしながらradioheadの「no surprises」を暗い部屋で一人で合唱するような男子学生と、何ら変わっていないのです。僕は今でも自信がなくて、でも格好だけはつけたいからそれを認めず、虚栄を張っているのです。
じゃなきゃ、一人で氷結なんて飲みません。ええ、もちろん一杯だけです。
外では雨がシトシトと降っています。シトシト、じゃないかもしれない。ざあざあかもしれない。
そして僕は、顔を真っ赤にして、キーボードを叩くのです。
大和書房
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