こっそり妄想徒然紀行

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【癌】山本KID徳郁、死去。思い出と名ファイト

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KID、悪い予感はしていた

山本KID徳郁が亡くなってしまいました。今日の昼ごろでしょうか。会社のPCで何気なくヤフーを開いたらこのニュースがトップで出ていて、思わず「え!?」と叫んでしまいました。

急いでtwitterを開くと次々とこのニュースが流れてきました。誰もが「しんじられない・・・」といった感想をつぶやいていました。なんかこの時点ではtwitter上もまだ呆然としていると言うか、悲しいと言うよりかは「え?」って感じでした。

 

KIDが癌である事を公表したのは7月のこと。公表してから今回の訃報まであまりに短かったからみんな「え?」となったんだと思います。

 

でも、嫌な予感はちょっと前からありました。

 

最初は、格闘代理戦争シーズン2。レジェンド達が指名した後継者が競い合う、という番組ですが、KIDはこの番組のレジェンド枠でメイン級の扱いをされていました。何しろKIDトライアウトという予選大会が開かれたのです。シーズン1ではトライアウトは魔裟斗でした。だからシーズン2ではKID推しでいくんだろうなと思ったものです。

 

ところが途中からそのKIDが番組に現れなくなります。出るのはコメントのみ。トライアウトをくぐり抜け、KIDの後継者として指名された辻本の試合の時でさえ、KIDは登場しませんでした。

 

一度だけ、KIDが途中で登場した回がありましたがこの時点でKIDは随分と痩せていたように見えました。「あれ、KID、病気じゃね・・・?」と格闘ファンなら思ったはずです。

 

だから7月に癌であることが公表された時も「ああ、癌だったのか・・・」と思ったファンが多かったはずです。

 

そして9月30日に行われるRIZIN13での堀口恭司VS那須川天心。

公式の発表が本当なら、本当はこの試合の前に堀口はキックルールで一戦挟むはずだったと言います。しかし堀口は「それよりいきなりやりましょう」と要求したのだとか。

「その方が面白い」と。

 

これはただの憶測ですが、堀口はKIDの病状が深刻である事を知り、年末を待たずにこのゴールデンカードを実現させたのだ、という考え方がファンの間ではあります。

 

MMAとキックボクサーの対決といえば大晦日を賑わせたKID対魔裟斗。日本の格闘技がお茶の間の市民権を得ていた時代です。堀口は、それを現代に再現しようとした。それも、自分の師匠であるKIDがまだ元気なうちに・・・。

 

本当かどうかはわかりません。ただKIDの病状は決して明るいものでは無いのだと、きっとみんな思っていたと思います。

 

ただ、それにしても、です。

堀口の思いはわずかに間に合わなかった。なんかやばいんだろうなと思いつつもまさかこんな急に訃報が届くとは誰も思わなかったでしょう。

 

山本KID徳郁が残したこと

もう散々いろんなところで呟かれていますが、KIDはまさに現代の日本の格闘技界の礎を築いた一人だと言えると思います。

それは、軽量級にスポットライトが当たるようになったという事。

 

もともと、日本の格闘技といえばヘビー級、でかい男同士のぶつかり合いでした。力道山やアントニオ猪木といったプロレスラーから派生した世界観だったからです。そしてK-1、PRIDEでも主役はヘビー級でした。

 

そこに風穴をあけたのは魔裟斗、そして五味隆典でした。中軽量級というジャンルを作り上げ、日本人が世界と戦える舞台を作り上げました。

 

ただ彼らも今でいうライト級、つまり70kgを主戦場として戦う選手。その70kgの選手を相手に立ち向かっていく小柄な選手、それが山本KID徳郁でした。

 

自分よりひとまわりもふた回りも大きな相手をワンパンでのしていくその様は本当にかっこよかった。「神の子」というにはちょっとガラが悪かったけど、神秘性が凄まじかったのを覚えています。

 

そして彼のために用意された舞台がHEROS。そしてKIDは自分の役割と期待をしっかりと受け止め、見事にトーナメントを優勝してみせました。ようやく軽量級の時代が現れたのです。

 

今、格闘技界でトップの人気を誇る那須川天心や堀口恭司、または武尊といった選手はみんな軽量級です。つまり、KIDの活躍がなかったら日の目を浴びていなかったかもしれない選手たちです。

 

小さい体でギラギラの目つき、彫刻のような肉体、そして闘争心と攻撃力。

KIDは漫画から飛び出してきたかのような選手だったのです。

 

個人的に印象深いKIDの試合

さて、KIDの試合として真っ先に取り上げられるのがレスリングの宮田和幸との試合でしょう。レスリングでオリンピックを目指していたKIDにとってみれば、レスリングでメダルを取っていた宮田は格上の存在。そんな宮田に、HEROSでチャンピオンになったKIDはどう立ち向かうのか?格闘家は、オリンピックエリートには敵わないのでは?

 

そんな見方もあったわけですが、結果は皆さんご存知、開始早々の飛び膝KO。わずか4秒でのKOでした。まあ、まだMMAでの実戦経験の少ない宮田の立ち上がりを狙った作戦勝ちというのが正しい見方のような気はします。もしこの膝蹴りが外れていたら、どうなっていたかわかりません。

 

しかし、偶然かもしれないけどその一発を持ってくるのがKIDの凄さでもあります。

 

ただですね、僕、個人的にKIDで覚えてるのはこの試合じゃ無いんですよ。

まずはこれ。KIDが日の目を見るきっかけとなった村浜武洋戦。K-1MAXですね。

村浜といえば往年のキックボクシングファンからしたら大物です。シュートボクシングのエースとして世界の強豪と戦ってきた村浜。当時、修斗で少し名をあげてきたとはいえ、突然現れた山本KIDなんていう若者が勝てるはずがないと誰もが思っていたわけです。

しかしすごかった。テクニックがあるのかどうかわかんないけど、ぶん回すパンチが村浜を追い詰める。もう、村浜は完全に蛇に睨まれたカエル。ライオンを前にしたウサギのように弱々しく見えました。一度ダウンを奪ってから狂気の笑みを浮かべながらノッシノシと村浜にトドメを刺しにいく様は本当に狂気でした。

 

次がこれですね。つっても二つありまして、両方思い出に残ってる理由は一緒なんですがHEROSのホイラーグレイシー戦とじゃバンダナラントンガラグ戦。

なんか正直、僕だけかもしれませんが当時KIDの実力って半信半疑だったんですよね。なんか作られた英雄っぽい感じがしてしまってました。

で、そんなKIDにぶつけられたグレイシー一族のホイラーと、ゴツゴツしたフィジカルをもつナラントンガラグ。

どっちの試合もKIDは思うように試合を運べなくて、苦戦していました。あー、KID、いよいよだめかなあなんて思っていたら、ですよ。

一発。ワンパン。まさにワンパン。一発で完全にのしてしまったKID。

 

この人は、持ってるわ。本物だ、と思ったものです。

 

RIZIN13、堀口恭司と山本美憂への影響は?

さて、気になるのがこれですね。堀口も山本美憂もRIZIN13での大一番を控えています。

二人にとってKIDは大きすぎる存在。試合の10日前に届いた訃報。

 

正直、試合をキャンセルしても誰も責めれないくらいの悲しみだと思います。

練習や減量など、試合直前の出来事としてはあまりにきつい。

 

ただ、二人は勿論戦うんだと思います。二人とも楽な相手ではないし堀口に至っては勝ち目の乏しい挑戦でもあります。

苦戦したら、もしくは負けたらきっと「直前にあんなことがあったしね・・・」と言われてしまう。KIDのせいになってしまう。二人はそんなことは絶対に避けたいはず。

 

堀口恭司、そして山本美憂にとって、今度のRIZIN13で戦うのは、相手でも自分でもなく、山本KIDなのかもしれません。

 

ご冥福をお祈りいたします。心から。

 

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