木尾士目といえば”げんしけん”の方が有名だとは思うのですが、僕にとってはこの「四年生」と「五年生」という作品の方が印象的です。ちょうどこれを読んだのが僕自身が大学四年生だった事もあるんですけど。
人生の夏休み最後のなんとなく感を描いた「四年生」
「四年生」は一巻完結です。同じ大学、同じゼミの四年生、弁護士志望の才女「芳乃」と、ぐうたら大学生「明夫」の微妙な距離感を描いた作品。
昨今の”意識高い”学生は僕みたいな30代おっさんからするともはや異星人ですが、僕にとっての大学生ってこんな感じでした。大学生活残りわずかな「たそがれ感」をここまで見事に表現するのはなかなかなんじゃないかと思います。
同時に、もう成人しているとはいえやっぱりまだまだ子供の大学生特有の気だるい恋愛観。何か大きな事件があるわけでもなく、ただただ将来への不安と、目の前のセックスと、目を背けている現実と、終わる事を自覚している青春時代への思い。
ああ、大学最後の半年って、僕もこんな感じだったなあ、と。今の大学四年生もこんな感じなんですかね。
社会人になって目が覚めたように変わる人生観を描く「五年生」
そして続編が五年生。四年生の続きです。タイトルからわかる通り、主人公の明夫くん、見事に留年します。で、東京の弁護士事務所で働き始める芳乃とのすれ違いを描く作品です。
なんなんすかね、社会人になると、ほんとに色々ガラッと変わりますよね。目が覚めたように、というか。
よきにしろ悪きにしろ、「それなりに」なっていくもんですよね。そんな感じで都心のOLとして変わっていく女子と、前と変わらずグダグダやっている男子。
どのような道をたどっていくかは何となくお分かりかと思います。
社会人と学生の、目には見えない、言葉では表せない微妙な世界観の差を、男女の恋愛というフィルターを通して描く、名作です。全四巻でっす。