☆少しだけネタバレします。致命的なほどではありませんが、ご了承を。
マーケティングとしての成功例
このアニメの魅力はもう沢山あるのだけど、個人的に好きなのはその内容ではなくマーケティングの手法でした。
このアニメは、いわゆる”鬱展開”するアニメです。
悲劇だし絶望的だし、僕なんて途中で見るのが辛くなったところがあった位です。
ただ、視聴者にそれを悟らせなかったんですね。というかあえてミスリードを狙ってやってるのが凄くて。
どんなミスリードかというと、番組スタート前の番宣CMがネットに転がっていたのでご覧ください。
もう、これだけ見たらいわゆる典型的なアニメロリ美少女モノ間違いなしですよね。おっきいお友達、もしくは健全な幼女が大興奮しそうです。
「魔法少女」「まどか☆マギカ」というタイトルからも、いわゆる一つの「魔法少女もの」と視聴者に認識させつつオープニング曲、第1話と始まっていき、視聴者を完全に
「ああ、ああいう系統ね」と固定概念を植え付けていきます。
で、第3話で突然ズドンと落とす、と。
第3話で、ある出来事が起きるのです。所謂、鬱な。僕も見ていて開いた口がふさがりませんでした。というか、何が起こっているのかよくわかりませんでした。
視聴者を唖然とさせたままそのままED曲に入っていくのですが、この時に視聴者は「だまされた」と気づきます。というのも、これまでの1、2話の「魔法少女ものっぽい」ED曲から一変、ホラーかつハードボイルドなED曲に変貌していくからです。
こうして四話からは魔法少女ものテンプレートからことごとく逸脱し、悲劇的な物語へ失踪していくのです。
完璧な物語
という、いわゆる作り手の「やってやった感」が垣間見える作り方も好きなんですが、それをおいてもこの物語は素晴らしいです。12話でしっかり伏線回収しきって終了するのも見事です。視聴者に謎を残さない、というか。
僕、このアニメの物語は「男視点の世界に翻弄される少女の群像」だと思っています。
魔法少女と呼ばれる少女たちは、”仕組まれた”ルールに組み込まれている事に気付き、争い、傷つき、絶望していきます。
これは、なんというか、大人たちが子供達によく言う「信じれば夢は叶う」とか「やりたい事を探せ」的な強迫観念にも似たルールのメタファーだと僕は思ってて(多分考えすぎ)。
この物語では、信じても夢は叶いません。というか信じることがやがて絶望に変わっていく、という物語です。
「奇跡も魔法も、あるんだよ」という劇中の名台詞があるのですが、残念ながら奇跡と魔法は絶望に変わっていくのです。
そしてこの”魔法少女”という概念が何とも男視点を感じます。なぜ、魔法少年じゃなかったんでしょうか、と。男にとっての”女”、成人男性にとっての”少女”。
エロスの対象として、消費されていく”女の子”。
翻弄され傷ついていく魔法少女は、身勝手な大人の男社会でなす術なく翻弄されていく少女そのもので。
そんな事を考えながら、彼女達の破滅に向かって進んで行く戦いを見ているともう最後は感動で涙が出てきます。
クリエイティヴへのリトマス試験紙
ヲタっぽい、と感じるのはごもっともだと思いますが、食わず嫌いは勿体ないような気がします。だってその印象、マーケティングでわざとやってるだけですから。
そうした偏見やイメージをあざ笑うのがこの物語です。
そして このアニメ、クリエイティヴ界隈でやたら人気です。冒頭のマーケティング的”罠”は勿論、完成度の高い物語、圧倒的密度の音楽、唯一無二の魅力を誇る世界観ヴィジュアルなど、いわゆる”ものづくり”の熱量が半端ないのです。このアニメを見てどんな事を感じるかが、クリエイティヴへのリトマス試験紙になるんじゃないかと本気で僕は思っています。
僕も実はリアルタイムでこのアニメを見ていたわけではありません。個人的にリスペクトしているアーティストやクリエイターが一時期やたらこのアニメを押していて、それなら見てみようかなあと予備知識も何もない時にぽっかり空いた時間に何気なく見てみたらどはまりした、と。面白すぎて徹夜で全部見てしまったのを覚えています。
文化庁か何かの賞も受賞してるしアメリカでも上映してるしアメリカでも何かの賞とってたし、とか言うと、きっと世間の見る目も変わるんでしょうね。
そういう浅はかな人々をあざ笑うのが、このアニメなんですけど。
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